愛用品シリーズ②無線機・スタンダードC510 |
最近、山歩きの回数かなり減って体力が落ちているし、8月は暑かったので、疲労が蓄積していたんだと思う。ここはいっちょ本腰入れて、体を作り直す必要がありそうだ。
前置きが長くなったが、何を隠そう、ワタクシはハムだ。そうアマチュア無線のことである。従事者免許をとったのは、今から25年ほど前。本当は中学生の時に、やりたくてやりたくてしかたがなかったのだが、当時は試験は松山までいかなければならないし、高価なリグ(無線機のこと)など丸坊主の中学生に買えるはずもなかったので、高嶺の花だった。しかたがないので短波ラジオで外国放送を聞くBCLをやりたかったが、それも叶わず、やがて関心も薄れていったのだが、成人してある機会に従事者免許を取得した。当時は携帯電話もインターネットもあるわけがなく、無線機に憧れたもんです。
が、リグを買うほどの関心もなく、忘れていたのだが、しばらくして山に頻繁に行くようになって、「お、そういえば、オレ免許あるがやった」と思い出して開局した。であるからして、見ず知らずの外国の方々と交信を楽しむ純粋なハムではなく430と144ハンディだけのド素人でございます。これまでいろいろな機種を使ったが、山用のリグとして最も優れていると感じているのが、このスタンダードC510である。
理由は①必要十分な1Wの出力、②そこそこ軽量、③単Ⅲ乾電池3本で動く、④リグが安価(だった)
唯一の短所は、音量ボリュウムがサイドについているため、不慣れだと長く山で歩いているうちに知らぬまま音量が絞られてしまって呼ばれても気がつかないミスをすることがある。どうせなら上部のSETつまみで音量調整もするようにすればよかったのに。
出力であるが、近頃、カタログスペックに惑わされて、高価な5W機を買う人が多い。うちの山岳会にもたくさんいるので怒られそうだが、率直に言うと、山で使う分には、5Wははっきりいってムダである。意味がない。
これらのトランシーバーの電波はVHF、UHF帯と呼ばれる電波でテレビの電波と性格がよく似ている。つまり光と同じで、見通しがないと通じない。すぐそこでも山の陰は10Wだろうが20Wだろうがダメである。逆に見通しが効けば1Wでもかなりの距離飛ぶ。自分の乏しい経験でも東赤石山でC510で通常のアンテナで山口県の人と偶然交信したことがある。山口のどこだったか忘れたが、一番手前の柳井市あたりでも100キロはゆうに越えるし、山口市ならさらに50キロはプラスしなければならないわけだが、59(非常によく聞こえるという意味)だった。剣山と石鎚山が約90キロ。1Wで出力が足りないという人は、山でどういう使い方を想定しているのだろうか。
一方このオーバスペックにより、失うものは多い。価格はまあいいとして、まず重量。どうしても耐熱性などを考えゴツくなるのはしかたがない。さらに重大なのはバッテリーである。手っ取り早く高出力を出すためには、電圧をあげるのが早道であるが、通常の単Ⅲを並べていたら、すごく重くなってしまうので、最近流行の専用リチウムイオン電池の使用となる。下界で使う携帯電話ならいいのだが、山にはコンセントがないわけで、やはり充電池というのは都合がよろしくない。で、山でバッテリーが切れたら、予備の単Ⅲを使うしかないわけだが、最近の5W機はまともに単Ⅲを使う設計になっていないことが多いので困る。
こういことはないほうがいいし、想定外の利用なのだが、実際に最も無線機が活躍するのは山の事故の捜索の時だ。事故パーティがアマ無線で救援を呼べることは四国の場合はかなり可能性が低く、どうしても携帯電話に頼ることになるが、人海戦術で可能性のあるところをつぶしていく地上の捜索隊同士の意志疎通、上空のヘリとの情報共有は無線機がなければ話にならない。
捜索部隊は、消防団、警察、山岳会の混成部隊になる。それぞれに使う周波数が違うのだが、登山口の現地本部みたいなところに中継役をおけば、情報共有、意志疎通ができる(消防団や警察は必ず陣取っているので)。猟や林業関係者の消防団員は山をよく知っているが、役場や農協から借り出されてきた若い人、警官の大半は山には詳しくない(当然だと思う)ので山の地形図が読め、山慣れしている山岳会からの情報は、「有事」の際には自分らが思う以上に重要な役割を果たす。
そこで、山中で何日もかけて捜索するときに単Ⅲ電池が使えるのと使えないのでは決定的に差が出るのである。単Ⅲならまとめてガバッと買っておくということができる。
また単Ⅲがなくなることはありえないが、専用電池の供給がいつまで続くのだろうか。携帯電話と違い無線機の寿命は長い。20年はザラだ。機械はまだまだOKなのに、電池がなくて使えないのでは悲しい。
しかし、最近のスペック競争と、今度はスリム化の流れの中で、単Ⅲ機は駆逐されてしまった。写真のC510はスタンダードがヤエスに吸収され、生産中止になった後に、どうしてもほしいと思い店頭在庫を調べて通販で買った。あちこちに問いあわせたが、ほとんどなく、最後の一台みたいな感じだったと思う。買っておいてよかったなと実感するが、他にもリグがゴロゴロしているので、なかなか出番がないのが玉に瑕。
あ、そうそうこの間、リグを増設(他にもハンディ機があるので)する手続きをしたが、以前は技適証明を、どっかの天下り団体に3000円くらい支払って証明してもらわなければダメだったのだが、今はそれは不要で番号を書くだけになっているので、増設手続きに費用はかからなくなっている。これは非常にすっきりしてよろしい。
それから非公開コメントについてですが、受付けない設定にさせていただきました。自分としてはなるべく情報をオープンにして議論をしていきたいので、その趣旨をどうかご理解くださいませ。