2008年 03月 10日
自衛隊の懸垂下降 |
3月9日、陸上自衛隊50普通科連隊・レンジャー隊員の懸垂下降のデモンストレーションを見た。自衛隊への考えは、とりあえず脇において、山屋として、どのようなテクニックと装備でやるのか関心をもって見せてもらった。
高さ20メートルほどの屋上から壁面を降下したが、デモ用に演出しているのだろうとは思うが、かなり危なかっしいものだった。山岳会であんなことをやっていたら、ぶっ飛ばされることは確実。
まず装備。使用していたロープは登山用でもケービング用でもなく消防のクレモナと同じような安物の太いナイロンロープ。径は12~15ミリほどか。懸垂器具は、鉄ビナこと鉄製のカラビナ2枚だけ。ハーネスはなんとロープで作った簡易ハーネスを使用していた。
大声で奇声を上げるのは、まあいいとして、支点への影響を無視して、すべてのアクションをガンガンやりすぎ。勢いよくダーッと下降し、ガンと急ブレーキでストップ。こんなことはやってはいけませんという見本のような下降である。
まったく伸びのないロープで、あれほど急激な動きをすれば支点へのストレスは相当なものであり、破壊する可能性が非常に高い。たぶん軍隊ではゆっくり降りていると下から撃たれるので急ぐのだろうが、懸垂下降で強い動きをすることは絶対にタブーであり、基本中の基本。滑らかにスムースに、支点に衝撃を与えないように下りなければならない。
致命的だなと思ったのが、体を下に向けてダーッと下りて、地面ぎりぎりでぴたっと止まるデモをしていた隊員にバックアップをまったく取らせていなかったこと。 動画はこちら
一歩間違えばグランドフォールであり、せめて万一の場合に備え、別ルートの確保を用意しておくのが常識だろう。やはりそこには人命軽視の発想があるように感じた。
懸垂下降は、技術的にはきわめて簡単で、慣れれば誰にでもできるのだが、ミスをすると確実に死ぬ。名のある登山家が何人も懸垂下降のミスで死んでいる。四国の岩登りでは、石鎚北壁を登り終えたら上に道があるので懸垂下降はしないが、本州の大きな岩場ではそうはいかない。連続何ピッチも懸垂しなければ下りられないことがままある。以前に屏風を登った時、夕暮れが迫る中、雨が降り出し、連続6ピッチくらいの連続懸垂下降をしたことがあるが、ロープが回収できなくなり、必死で登り返したことを覚えている。何ピッチも連続する下降は、どうしても注意力が散漫になってくる。下降中の事故は本当に多いので、くれぐれも注意する必要がある。
隊員に「ほんとにいつもこんな装備でやっているの?」と聞いてみた。すると苦笑しながら「いやデモだけ。普段はストップやエイト環でやってるし、もちろんハーネスもつけてます」。ちょっと安心した。どうやら、鉄ビナ2枚での懸垂が自衛隊で決められたやり方らしく、公式行事の時は、この方式でやらないとまずいのだそうだ。乏しい装備で下降する技術を身につけておくのは大事かもしれないが、こんなことばかりやってたら事故が怖いなと思ったことだった。
会場には見るからにオタク系というか、ミリタリーマニアがいて、隊員がよくわかってない武器のスペックを横で代わりに説明していた。知事や県議の先生もたくさん見かけ、M田先生が興味深そうに小銃を何度も手にとって構えていたのが印象的だった。全国紙H氏が、武器に詳しいのには驚きました。
高さ20メートルほどの屋上から壁面を降下したが、デモ用に演出しているのだろうとは思うが、かなり危なかっしいものだった。山岳会であんなことをやっていたら、ぶっ飛ばされることは確実。
まず装備。使用していたロープは登山用でもケービング用でもなく消防のクレモナと同じような安物の太いナイロンロープ。径は12~15ミリほどか。懸垂器具は、鉄ビナこと鉄製のカラビナ2枚だけ。ハーネスはなんとロープで作った簡易ハーネスを使用していた。
大声で奇声を上げるのは、まあいいとして、支点への影響を無視して、すべてのアクションをガンガンやりすぎ。勢いよくダーッと下降し、ガンと急ブレーキでストップ。こんなことはやってはいけませんという見本のような下降である。
まったく伸びのないロープで、あれほど急激な動きをすれば支点へのストレスは相当なものであり、破壊する可能性が非常に高い。たぶん軍隊ではゆっくり降りていると下から撃たれるので急ぐのだろうが、懸垂下降で強い動きをすることは絶対にタブーであり、基本中の基本。滑らかにスムースに、支点に衝撃を与えないように下りなければならない。
致命的だなと思ったのが、体を下に向けてダーッと下りて、地面ぎりぎりでぴたっと止まるデモをしていた隊員にバックアップをまったく取らせていなかったこと。 動画はこちら
一歩間違えばグランドフォールであり、せめて万一の場合に備え、別ルートの確保を用意しておくのが常識だろう。やはりそこには人命軽視の発想があるように感じた。
懸垂下降は、技術的にはきわめて簡単で、慣れれば誰にでもできるのだが、ミスをすると確実に死ぬ。名のある登山家が何人も懸垂下降のミスで死んでいる。四国の岩登りでは、石鎚北壁を登り終えたら上に道があるので懸垂下降はしないが、本州の大きな岩場ではそうはいかない。連続何ピッチも懸垂しなければ下りられないことがままある。以前に屏風を登った時、夕暮れが迫る中、雨が降り出し、連続6ピッチくらいの連続懸垂下降をしたことがあるが、ロープが回収できなくなり、必死で登り返したことを覚えている。何ピッチも連続する下降は、どうしても注意力が散漫になってくる。下降中の事故は本当に多いので、くれぐれも注意する必要がある。
隊員に「ほんとにいつもこんな装備でやっているの?」と聞いてみた。すると苦笑しながら「いやデモだけ。普段はストップやエイト環でやってるし、もちろんハーネスもつけてます」。ちょっと安心した。どうやら、鉄ビナ2枚での懸垂が自衛隊で決められたやり方らしく、公式行事の時は、この方式でやらないとまずいのだそうだ。乏しい装備で下降する技術を身につけておくのは大事かもしれないが、こんなことばかりやってたら事故が怖いなと思ったことだった。
会場には見るからにオタク系というか、ミリタリーマニアがいて、隊員がよくわかってない武器のスペックを横で代わりに説明していた。知事や県議の先生もたくさん見かけ、M田先生が興味深そうに小銃を何度も手にとって構えていたのが印象的だった。全国紙H氏が、武器に詳しいのには驚きました。
by tosahiro-k
| 2008-03-10 19:17
| 取材こぼれ話